『氷の魔物の物語 全24巻+外伝』(杉浦志保作・冬水社いち好きコミックス)

おもしろかったです。
これはたしか大学浪人していたころに途中まで揃えていたのですが(なんか最近そういうの多いですね)、先日ようやく完結したらしいという情報を小耳に挟み、あらためて買って読んでみた次第です。
外伝もいれて25巻という長編ですが、あまり長いという感じはしませんでしたね。連載当初からラストまでの流れがおおむね決まっていたというだけあって、中だるみすることなく読み切ることができました。

で、どんな話かというと、いわゆる異文化コミュニケーションホモです。
冷酷で残忍な魔物(でも美形)・ブラッドが天然癒し系美少年・イシュカと出会ったことで、互いをかけがえのない存在と感じるようになる……という、定番中の定番。それまで人間を殺すことに対してなんの疑問も抱かなかったブラッドが、大切な存在(イシュカ)を得たことで少しずつ変わっていく――という展開は、上の説明を読んだだけでも想像に難くないでしょう。
とはいえ、それだけで終わらないのがこのマンガで、序盤はブラッドに対する「お母さん」的な存在だった(男なのに……)イシュカが、中盤から終盤にかけては徐々に弱さや脆さを露呈していったりと、従来のものよりもう一歩突っこんだところまで描かれていて、読みごたえがありました。

――と、ここまでまじめに感想など書いてみたのですが(もちろん今までのも本音ですが)、肛クラ的に言わせてもらうと。

……最後までどうにもならない二人でした。

この二人、出会って間もないころからラブラブで、すでに1巻で「おれの体全部あげる(byイシュカ)」だの「俺はおまえがいればいいんだよ!!(byブラッド)」などという言葉を交わし合い、2巻では告白&人前でチュー、3巻に至っては抱きあって眠る関係になっているのですが、それ以後はなんの進展もありません。
なんにもですよ!?
いや、メンタル的にはさらに結びついていってるのですが、人間メンタル面だけではどうにもならないものがあるというか、わたしとしてはできれば身体も結びついてほしかったというか、いくら200歳↑(魔物だから)とはいえ、好きな相手と毎晩いっしょに寝てなんにもしない攻ってどうよ?というか、せめて手でとか口でとか自分で……(自主規制)
――まあ、いろいろと思うところがあったわけです。

いえ、なにもわたしだって、杉浦さんにぐっちょぐちょの糸引いてるようなエロを期待していたわけではないのです。
人にはそれぞれ、作風とか傾向とか得意不得意というものがあります。汁の飛び散り方やナニの微妙なトーンワーク、イッたときの表情に命を懸ける人もいれば、繊細な台詞まわしや切なげな表情、幾重にも張りめぐらされた伏線なんかに力を入れる人だっているでしょう。
それはそれでいいのです。
いいのですが、最後の最後くらいは「裸で抱きあってチュー→朝ベッドのなかでまったりしている二人」的な絵があってもよかったような……花も嵐も乗り越えて、最後は長年連れ添った夫婦のような様相を呈するに至った二人ですが、実際のところやってるのかやっていないのか気になって仕方がありません。(やってなさそう……)