『薔薇とボディガード』
『星とボディガード』
『琥珀とボディガード』
『ボディガードの告白』
『海とボディガード』
『探偵とボディガード』(たけうちりうと著・SHYノベルズ)

なんとも痛快なシリーズでした。
前々から読みたいと思っていたというのもあるのですが、これだけの冊数を一気に読破。これに、以前読んだ『紳士とペナルティ』を加えると、シリーズ全巻になります(完結済)。

このシリーズの見どころは、なんといっても「読んでも読んでも美形ばかり」ということでしょう。
日系アメリカ人の主人公(受)が、東部の警護会社へ就職したところからストーリーは始まるのですが、社長の方針でボディガードは皆美形。
主人公曰く、「警護職に就いている全員が(ついでに社長も)、モデルか俳優かというような美男美女揃い」。
たしかに、四六時中側についてまわられるボディガードがゴルゴみたいな顔だったら、ちょっと暑苦しい感じがしますよね。ゴルゴはあれでいい男かもしれませんが、とりあえずホモ小説の登場人物としては、一般受けしないタイプです。

とはいえ、顔がいいだけで務まる仕事ではありません。
ときには命がけで依頼主を守り抜くだけあって、かれらはいずれも優れた能力の持ち主です。精神的にも肉体的にもタフであるのはもちろんのこと、頭脳だって優秀でなければなりません。
いわば、精鋭中の精鋭。顔がいい上に仕事もできる男たち……ホモ好きとしては、拍手喝采したくなるような職場環境ですね。
そのうえ仕事が仕事だけに、有名人や要人、実業家なども続々登場。人気のロックスター、若くして事業に成功した大富豪、天才と呼ばれたスター・スケーター、美貌の映画俳優……なんとも豪華な顔ぶれです。

この錚錚たる面子のなかへ入っていった主人公ですが、かれがまたすごい。
といっても、スキップして大学を卒業、射撃の名手でバイアスロンのゴールドメダリスト、などという経歴はこの際関係ありません。
かれの武器は、日系人特有のベビーフェイス。これにアラスカ育ちの素直さが加わればもう無敵です。
社長方針から鑑みるに、警護職のメンバーになることができたという時点で、かれの容姿もなかなかだということがわかりますが、出社一日目にして警備部門のリーダー(攻)をカメラ越しに瞬殺したことからも、その威力は相当なものだということがわかるでしょう。
多少のすったもんだの末、恋人同士となるかれらですが、その後も主人公は行く先々で依頼主たちを魅了していきます。

なかでも一番面白かったのは、『琥珀とボディガード』。
この巻では凄腕のテロリスト相手に、水面下で「惚れさせるか殺られるか」のスリリングなせめぎ合いを繰り広げる上、主人公は「親子で惚れさせる」という離れ業(?)をもやってのけます。
番外編(『紳士とペナルティ』『ボディガードの告白』)の主人公が確信犯的たらしなら、この主人公はさしづめ天然のたらしでしょう。
無自覚にやっているとはいえ、かれが、金や地位・美貌など他人が羨むものをいくつも兼ね備えた人々の心を次々と捉えていく(しかも本命はキープしてある)ようすには、見ていて爽快な気分になります。これぞ受の本領発揮といったところです。

しかし、依頼主もボディガードを雇うまえに、もう少し(ボディ以外の部分)をなんとかする必要があるのではないかと、他人事ながら思いました。

コメント