『はいまーとろーぜ』全3巻(鈴木あみ著・アイスノベルズ)

"Heimat Rose"――ドイツ語で「故郷のバラ」を意味するこの小説。

なぜドイツ語?(ドイツが舞台ではない)
なぜバラ?(出てこない)
なぜひらがな?(最大の謎)

……という疑問は抱くものの、中身は上々。以前にweb上のレビューを読んで興味をもったのですが、期待に見合うおもしろさでした。
ストーリーは裏表紙のあらすじにもあるように、いわゆるラブロマンス。
それも、極寒の流刑島から華麗にして陰謀うずまく宮廷までを一気に駆けぬける、ジェットコースター・ロマンスです。

孤児として育ち、10歳のときから流刑島で暮らしていたチュール(受)。
無二の親友によって流刑に処され、復讐を誓う王族・レイ(攻)。
親友に濡れ衣を着せて陥れ、自らは王女と結婚することで次期国王の地位にまで上りつめた宰相・フェルマノワール。
そして、国王の一人娘としてなに不自由なく育ち、なにも知らずにフェルマノワールと結婚した深窓の姫君・オルタンス。

この4人をめぐり、陰謀あり、愛憎あり、駆け引きあり、女装あり(?)のドラマティックなストーリーが展開されていきます。
生まれ持った頭脳と腕で、看守亡き後、無法地帯と化していた島をあっという間に掌握したレイ。復讐のためならどんな非情なこともやってのけるかれに恐れを感じながらも、かれと共に都へいくことを決めたチュール。
かつての親友を裏切り、命さえも奪おうとしながらも、その帰還をだれよりも待ち望んでいたかのようなフェルマノワール。さらに、死んだはずのレイが生きて戻ってきたことで、自分の夫に疑惑を抱きはじめたオルタンス。

他にも、レイの忠実な部下にして女好きで気のいい兄貴分のラフや、不気味な実験を繰り返しながらも腕はたしかな医師・ギーシュ、女装したチュールに一目ぼれして、以来なにかと助けになってくれる公爵家の子息・アランといった個性的な脇役が登場するなど、恋愛以外の面においても並みのライトノベルスには引けをとりません。

そしてもちろん、忘れてはならないのがエロシーン!
これがまた、最初から最後までほとんどまんべんなくあるのですが、その一つ一つに作者のエロに対するこだわりが感じられます。
やる場所しかり、やり方しかり、どれをとっても同じパターンはありません! 言葉責めあり女装プレイありのお楽しみ満載です。(それほどマニアックではありませんが)

――そんなわけで、とても満足できたシリーズでした。
個人的にはもう少しコメディ色が強いほうがツボにはまったなと思うのですが、話のバランス的にはこれでいいのかなと。

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